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CPX・運動処方

CPXの9パネルの見方|ATを軸に読めば迷わない

公開日・最終更新日:

CPXのレポートで9パネルを渡されても、9枚を順番に眺めるだけでは、どこを見ればよいか迷います。この記事では、AT(嫌気性代謝閾値)を探す役割で9枚を3つに分け、負荷の確認からAT、RCPを見つけるまでの手順を整理します。ATとRCPそのものの意味は、ATとは?CPXでの意味と判定方法を解説とRCPとは?ATとの違いをやさしく解説で解説しています。

心臓リハビリテーション必携の配置で9枚のグラフを3行3列に並べ、役割で色分けした模式図。太い青の枠はATを探す主役の5枚(VO2・VCO2、V-slope、VE/VO2・VE/VCO2、R、ETO2・ETCO2)。青の点線の枠は確認に使う2枚(VE、VE vs. VCO2)。灰色の枠はATでは使わない2枚(心拍数・酸素脈、TV-VE関係)。時間経過のグラフには、AT・RCPの手がかりになる時点に縦の点線を引いている。学習用の架空データ

図1:9パネルを、ATを探すための役割で色分けしました。並びは心臓リハビリテーション必携の配置です。当サイト作成(架空データの模式図。心臓リハビリテーション必携 2022年増補改訂版 Ⅲ章、CPX・運動療法ハンドブック 改訂5版 第7章などをもとに整理)。

私自身、初めてCPXのレポートを渡されたときは、まずAT、そのあとにRCPの順で探していました。ただ、負荷がしっかりかかっているかどうかは分かりませんでした。そこでこの記事では、最初に負荷を確かめる順番にしています。

9枚を役割で3つに分ける

心臓リハビリテーション必携(以下、必携)の9パネルは、6枚が時間経過のグラフ、3枚が2つの値の関係を見るグラフです。並びは教科書の版によって変わるため、グラフは番号ではなく、縦軸と横軸の名前で探します[1][4]。

ATを探す主役は、次の5枚です[1][3][4]。

  • VE/VO2・VE/VCO2(換気当量)×時間:この記事では、ATを探すときに最初に見ます。下がってきたVE/VO2が上がり始める点を探します。
  • ETO2・ETCO2×時間:ETCO2が上がらないまま、ETO2が上がり始める点が、ATの手がかりです。
  • R(ガス交換比)×時間:最大負荷がかかったかの確認と、ATを決めるときの参考に使います。
  • VO2・VCO2×時間:並んで増えていたVO2とVCO2の関係が崩れ、VCO2の増え方が急になり始める点が、ATの手がかりです。
  • V-slope(横軸VO2・縦軸VCO2):ATを決めるのに使います。

確認に使うのは、次の2枚です[1][3][4]。

  • VE×時間:マスクからの漏れの確認に使います。傾きはATとRCPで急になります。
  • VE vs. VCO2(横軸VCO2・縦軸VE):RCPに達すると傾きが急になるので、RCPの確認に使います。

残りの2枚は、ATを探すときには使いません。運動を止めた原因を考えるときに使うグラフです[1][3][4]。

  • 心拍数・酸素脈×時間:心拍の応答と、運動中の心臓のポンプ機能を見ます。酸素脈は一回拍出量の指標とされます。ただしβ遮断薬を使っているときは、そのまま心臓のポンプ機能の指標とは考えられません。くわしい読み方は、別の記事で解説する予定です(近日公開)。
  • TV-VE関係:呼吸の余力(呼吸予備能)を見ます。呼吸予備能は、MVV(最大努力性換気量)とpeak VEの差です。CPXのデータだけでは求められないため、呼吸機能検査で得たMVVと組み合わせます。くわしくはCPXの換気指標|VE・死腔・呼吸の読み方にまとめています。

探す前に:測れているかを確かめる

安静時のRが0.7未満なら、O2あるいはCO2ガスの較正を行います。ペダルの回転数が保たれているのに、VE×時間で最大負荷付近の傾きが浅くなっているときは、マスクからの漏れを考えます[1][3][4]。くわしい確かめ方はCPX実技|測定・解析・運動処方のポイントにまとめています。

手順1:負荷は十分だったか

R×時間で、運動を終えた時点(最大負荷時)のR(peak RER)を見ます。ガイドラインでは、信頼できるpeak VO2を得るにはpeak RER≧1.10が重要で、peak RER<1.05では負荷不十分とされています[2]。くわしくはpeak VO2とは?意味と読み方を解説にまとめています。

手順2:ATの候補を、換気当量のグラフで探す

ATは、まずトレンドグラフ(時間経過のグラフ)で探します。この記事では、換気当量のグラフから始めます。下がってきたVE/VO2が上がり始め、そのときVE/VCO2はまだ増えていない点が、ATの候補です[1][3]。

手順3:同じ時刻に縦線を引いて確かめる

候補の時刻に縦線を1本引くつもりで、ほかの主役のグラフを見ます。ETO2・ETCO2、R、VO2・VCO2の3枚で、同じ時刻に向きが変わっているかを確かめます(図2)[1][3]。それぞれの判定基準は、ATとは?CPXでの意味と判定方法を解説で解説しています。

時間が横軸の4枚のグラフを縦に並べた模式図。上から、VE/VO2・VE/VCO2、ETO2・ETCO2、R、VO2・VCO2。ATの時刻に4枚を通る縦の点線を引き、VE/VO2が上がり始める点、ETO2が上がり始める点、Rが上がり始める点、VCO2の増え方が急になる点に丸を付けている。RCPの時刻には上の2枚に縦の点線を引き、VE/VCO2が上がり始める点とETCO2が下がり始める点に点を付けている。学習用の架空データ

図2:時間が横軸の4枚を縦に並べ、同じ時刻に縦線を引いた模式図です。丸はAT、点はRCPで向きが変わるところです。当サイト作成(架空データの模式図。心臓リハビリテーション必携 2022年増補改訂版 Ⅲ章、実臨床で使えるCPX(心肺運動負荷試験)ポケットガイドブックなどをもとに整理)。

最後に、横軸が時間ではないV-slopeを見ます。VCO2の傾きが急になり始める点が、トレンドグラフで見つけた候補と合っているかを確かめます。トレンドグラフで候補が複数あるときは、最終的にV-slope法で決めます[1][3]。

ATが2つに見えるとき

運動前の過換気で血液中のCO2が下がっていると、本当のATより手前でVE/VO2が上がり始め、ATのように見えることがあります(偽閾値)。見分ける手がかりは、本当のATまではVE/VCO2が下がり続けることです。本当のATは、VE/VO2がもう一度上がり始める点です[3]。

漕ぎ方を途中で変えた(使う筋肉が変わった)ときも、2段階に見えることがあります。この場合はV-slopeでも手前の点で傾きが変わってしまうため、VE/VCO2の動きで確かめます[3]。

ウォームアップの時点で、もうATを超えているとき

ランプ負荷に入る前のウォームアップの時点で、すでにATを超えていることを示すサインがあります。CPX・運動療法ハンドブック(改訂5版)では、主役のグラフについて次の点が挙げられています[4]。

  • VO2・VCO2×時間:ウォームアップでVO2が頭打ちにならない
  • VE/VO2・VE/VCO2(換気当量)×時間:ウォームアップで、VE/VCO2がVE/VO2より低くなっている

また同じ資料では、ATを決めるときの参考として、R=1ならすでにATに達しているとされています。ただし、安静時やウォームアップ時のRが1に近い、あるいは1以上のときは、過換気だった可能性も考えるとされています。Rだけで決めず、ほかのグラフと合わせて確かめます[4]。

手順4:RCPを探す

RCP(呼吸性代償開始点)の候補は、換気当量のグラフで下がっていたVE/VCO2が上がり始める点と、ETCO2が下がり始める点が重なるところです。確認に使うVE vs. VCO2で、傾きが急になる点と合っているかを確かめます[1][3]。くわしくはRCPとは?ATとの違いをやさしく解説で解説しています。

ただし、心臓病の患者さんやフレイルが強い患者さんでは、ETCO2がATを超えたあたりから少しずつ下がり始めることがよくあります。ETCO2の動きだけを頼りにせず、VE/VCO2とVE vs. VCO2も合わせて確かめます[3]。

練習:架空のレポートで見つけてみる

数値と時刻は練習用に作ったもので、実在の患者さんのデータではありません。

グラフ架空のレポートで見えたこと
R×時間安静時は0.83。最大負荷時は1.14
VE×時間ペダルの回転数は保たれ、最大負荷付近の傾きは浅くなっていない
VE/VO2・VE/VCO2×時間7分でVE/VO2が上がり始める(VE/VCO2は増えていない)。10分でVE/VCO2が上がり始める
ETO2・ETCO2×時間7分でETO2が上がり始める(ETCO2は上がっていない)。10分でETCO2が下がり始める
VO2・VCO2×時間7分のあたりで、VCO2の増え方が急になり、VO2に近づき始める
V-slopeVCO2の傾きが急になる点が、7分の時点のVO2と合っている
VE vs. VCO2傾きが急になる点が、10分の時点のVCO2と合っている

問A:負荷は十分でしたか?

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十分だったと考えられます。最大負荷時のRは1.14で、ガイドラインで重要とされるpeak RER≧1.10を満たしています。安静時のRも0.83で、0.7未満ではありません。

問B:ATはどこですか?

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7分のあたりです。換気当量でVE/VO2が上がり始め、同じ時刻にETO2とVO2・VCO2の変化が重なっています。V-slopeの傾きが変わる点とも合っています。

問C:RCPはどこですか?

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10分のあたりです。VE/VCO2の上昇とETCO2の低下が同じ時刻に起きていて、VE vs. VCO2の傾きが急になる点とも合っています。

まとめ

  • 9枚は、ATを探す主役の5枚、確認に使う2枚、ATでは使わない2枚に分けて見ます。
  • まず最大負荷時のRで負荷を確かめ、換気当量でATの候補を探します。次に同じ時刻に縦線を引き、ほかの主役のグラフとV-slopeで確かめます。
  • RCPは、VE/VCO2の上昇とETCO2の低下が重なる点を探し、VE vs. VCO2で確かめます。

理解確認問題

問1

自転車エルゴメータのランプ負荷で、トレンドグラフにVE/VO2が上がり始める点が2か所ありました。1か所目の時刻ではVE/VCO2がまだ下がっており、その後も2か所目まで下がり続けていました。そして2か所目の時刻で、VE/VO2がもう一度上がり始めました。ATとして最も適切なものはどれですか。

  • A. 1か所目
  • B. 2か所目
  • C. 2か所の中間
  • D. 判定できないので、安静時の値を使う
正解と解説を見る

正解:B

運動前の過換気があると、本当のATより手前でVE/VO2が上がり始め、ATのように見えることがあります(偽閾値)。本当のATまではVE/VCO2が下がり続け、VE/VO2がもう一度上がり始める点が本当のATです。1か所目のあともVE/VCO2は下がり続けており、本当のATはまだ先にあるため、Aは誤りです。中間をとる根拠はないためCも誤りです。運動中の変化から判定できる場面なので、安静時の値を使うDも誤りです。

問2

60歳代の患者さんのCPXで、ランプ負荷に入る前のウォームアップの時点で、すでにVE/VCO2がVE/VO2より低くなっていました。マスクの装着や較正に問題は見当たりません。考え方として最も適切なものはどれですか。

  • A. ウォームアップの時点で、すでにATを超えている可能性を考える
  • B. ランプ負荷に入ってから、VE/VO2が上がり始める点をそのままATとする
  • C. RCPに達していると判断する
  • D. 負荷が十分にかかった証拠として扱う
正解と解説を見る

正解:A

CPX・運動療法ハンドブック(改訂5版)では、ウォームアップでVE/VCO2がVE/VO2より低くなっている場合、すでにATを超えていることを示すとされています。すでにATを超えている可能性があるのに、ランプ負荷に入ってからの点をそのままATとするBは誤りです。RCPは、下がっていたVE/VCO2が上がり始める点やETCO2の低下などで判定するため、Cも誤りです。負荷が十分だったかは最大負荷時のRで確かめるため、Dも誤りです。

問3

70歳代の患者さんが、下肢の疲労を訴えてCPXの運動を終えました。peak RERは1.02でした。このときのpeak VO2の読み方として最も適切なものはどれですか。

  • A. 心機能の上限を示す値として、そのまま運動耐容能の評価に使う
  • B. 負荷が不十分だった可能性があり、peak VO2の信頼性は低いと考える。早く終わった理由も合わせて考える
  • C. peak RERが1を超えているので、十分な負荷がかかったと判断する
  • D. 呼吸の制限によって運動が止まったと判断する
正解と解説を見る

正解:B

ガイドラインでは、peak RER<1.05は負荷不十分とされ、このときのpeak VO2の信頼性は低くなります。peak RERが上がらないまま早く終わった原因としては、下肢の筋力低下や本人のやる気などが考えられます。信頼性の低い値をそのまま心機能の上限とみなすAは誤りです。ガイドラインでは信頼できるpeak VO2にはpeak RER≧1.10が重要とされており、1を超えただけで十分とはいえないためCも誤りです。peak RERが1.05未満で負荷が不十分だった可能性があり、この結果だけでは、呼吸の制限で運動が止まったとは判断できないためDも誤りです。

参考文献・出典

  1. 日本心臓リハビリテーション学会. 心臓リハビリテーション必携(2022年増補改訂版). Ⅲ章 ATの判定基準・図24・図25(p202–203)、「6. Wasserman先生の9パネルの考え方」図35・表8(p213–214).
  2. 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. 第2章3.2(p23).
  3. 下郷卓史, 河野裕治. 実臨床で使えるCPX(心肺運動負荷試験)ポケットガイドブック. メディカ出版; 2025. 第5章(p88–116).
  4. 安達仁(編著). CPX・運動療法ハンドブック 心臓リハビリテーションのリアルワールド 改訂5版. 中外医学社; 2023. 第7章(p163–169)、第8章(p175).

この記事を書いた人

心リハラボ管理人のプロフィールイラスト

心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士

循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。

  • 理学療法士(臨床経験10年以上)
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 地域糖尿病療養指導士
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