peak VO2とは?意味と読み方を解説
前回の記事では、運動処方の基準になる AT(嫌気性代謝閾値) を掘り下げました。今回は、CPXのレポートでまず見る3指標の2つめ、peak VO2(最高酸素摂取量) を扱います。
peak VO2は「その人がどれだけ動けるか」を一つの数値で表す、運動耐容能の代表的な指標です。心不全では予後とも関連するとされ、CPXを学ぶうえで避けて通れません。この記事では、意味・読み方・臨床での位置づけを、細かい計算に踏み込みすぎず整理します。全体像はCPXとは(連載#1)もあわせてどうぞ。
peak VO2とは?
peak VO2(peak oxygen uptake:最高酸素摂取量)は、ほぼ最大負荷まで実施できた運動負荷試験で記録された最高酸素摂取量で、後述するVO2 maxの代用として用いられます。通常は運動終了直前30秒間の平均値をpeak VO2として採用します。
酸素摂取量(VO2)は「体がどれだけ酸素を取り込んで使えているか」を示す値です。運動強度を上げるほどVO2は増えていき、その人の限界に近づいたところで頭打ちになります。この上限付近の値が、運動でどこまで代謝を高められるか=運動耐容能の目安になります。
peak VO2とVO2 maxはどう違う?
学習の入り口でつまずきやすいのが、VO2 max(最大酸素摂取量) との違いです。
- VO2 max … 仕事率を増やしても酸素摂取量がそれ以上増加しなくなる「leveling off(頭打ち)」の確認を必要とする、真の最大値
- peak VO2 … 通常は運動終了直前30秒間の平均値として採用される、VO2 maxの代用値
臨床ではVO2のleveling offを確認できないことがあるため、実際のレポートでは peak VO2 が用いられます。

図1 当サイト作成。心臓リハビリテーション必携 Ⅲ章8「最大酸素摂取量(VO2 max)と最高酸素摂取量(Peak VO2)」①定義・測定法(p208–209)をもとに整理。
peak VO2の読み方
① 絶対値と体重あたりの値
| 表し方 | 単位 |
|---|---|
| 絶対値 | mL/min |
| 体重あたり | mL/kg/min(体重1kgあたり毎分) |
② 予測値に対する割合(%predicted)
2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインでは、年齢別標準値に対する予測率をもとに、次のように心不全重症度を分類しています。
| 年齢別標準値に対する予測率 | 重症度 |
|---|---|
| 80%以上 | 正常 |
| 60〜80% | 軽症 |
| 40〜60% | 中等症 |
| 40%未満、または検査実施不能 | 重症 |
この分類はpeak VO2の絶対値ではなく、年齢別標準値に対する予測率(%)による区分である点に注意してください(範囲の表記はガイドライン原典の表記に合わせています)。別途、2025年改訂版 心不全診療ガイドラインでは、80歳以上の高齢者については実測データに基づく年齢別標準値が示されておらず、%predictedを用いた評価の解釈には注意が必要とされています。
③ METs換算
peak VO2 を 3.5 mL/kg/min ≒ 1 MET の目安で割ると、おおよそのMETs(代謝当量)に換算できます。
④ peak RER(その値、どれくらい信頼できる?)
peak VO2は、どれくらい追い込めた運動負荷で得られた値かによって信頼性が変わります。その目安になるのがpeak RER(呼吸交換比)です。
- peak RER ≥1.10 … 信頼できるpeak VO2値を得るうえで重要とされます
- peak RER <1.05 … 負荷不十分とされ、peak VO2値の信頼性が低くなります
つまりpeak RERは、そのpeak VO2を得た運動負荷が十分だったかを見る手がかりであり、peak VO2の値そのものが成立するかどうかの条件ではありません。CPXのレポートにpeak VO2と並んで記載されていたら、あわせて確認する習慣をつけましょう。
なぜ心不全で重視されるのか
peak VO2が広く使われる大きな理由が、心不全の重症度・予後の評価に役立つとされる点です。十分な負荷をかけられた場合、値が低いほど運動耐容能が低く、一般に予後も厳しい傾向があるとされています(ただし、peak VO2単独で個人の予後が決まるわけではありません)。
重症心不全に対する心臓移植の適応検討でも、peak VO2は重要な判断材料の一つとして参照されてきました。2025年改訂版 心不全診療ガイドラインでは、peak VO2が14 mL/kg/min未満であることが、心臓移植適応の判定基準の一つとして挙げられています。なお、心臓リハビリテーション必携では「14 mL/min/kg以下」という表現で紹介されており、資料によって境界の表現に差がある点には注意してください。数値の一人歩きは避け、必ず成書・ガイドラインの最新の記載を確認してください。
運動処方とのつながり
peak VO2と前回扱ったAT(嫌気性代謝閾値)は、運動強度の軸の上で異なる位置にあります。ATはおおよそpeak VO2の50〜55%程度に相当するとされ、このレベル以下では代償性過換気が起こりにくく、日常生活動作や持続的な運動に近い強度の目安になります。
peak VO2そのものは「運動の上限」を示す値なので、運動処方の強度は前回扱ったATを基準に設定するのが基本です(50〜55%という比率自体を処方強度として使うわけではありません)。なお、心リハ実施後のpeak VO2の改善度も、予後予測に有用とされています。
つまずきやすいポイント
- peak VO2とVO2 maxを同じものだと思い込む — 臨床ではleveling off(頭打ち)が得られにくく、実際に使うのはpeak VO2です(FAQ参照)。
- カットオフ値を絶対視する — 移植適応などの基準値は、資料によって境界表現に差があります。単独の数値で断定しないことが大切です。
まとめ
- peak VO2は運動終了直前30秒間の平均値として採用される最高酸素摂取量で、運動耐容能を表す代表的な指標。
- 臨床ではleveling off(頭打ち)の得られるVO2 maxではなくpeak VO2を用いるのが一般的。
- 心不全では重症度・予後と関連するとされ、心臓移植適応の検討などにも用いられる。カットオフ値は資料によって表現に差があり、断定しない。
- 運動処方の強度はATを基準に設定する。心リハ実施後のpeak VO2の改善度は予後予測に有用とされる。
次回はVE/VCO2の意味と読み方を扱います。連載の全体像はCPXとは、学習の順番は心リハ学習ロードマップもあわせてどうぞ。
参考文献・出典
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン.
- 日本循環器学会/日本心不全学会. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.
- 心臓リハビリテーション必携(日本心臓リハビリテーション学会, 2022年増補改訂版)
- NPO法人ジャパンハートクラブ「心肺運動負荷試験の呼吸循環指標」
よくある質問
Q. peak VO2とVO2 max(最大酸素摂取量)は同じものですか?
A. 厳密には異なります。VO2 maxは仕事率を増やしても酸素摂取量が増加しなくなる「leveling off(頭打ち)」を確認できた値を指しますが、臨床ではVO2のleveling offを確認できない場合があります。そのため、通常は運動終了直前30秒間の平均値として採用される「peak VO2」を用いるのが一般的です。
Q. peak VO2は体重あたりの値(mL/kg/min)で見ればよいですか?
A. 体重あたりの値(mL/kg/min)は、体重1kgあたりに換算した値です。ガイドラインでは、年齢別標準値に対する予測率(%)を用いた心不全重症度分類も示されています。
この記事を書いた人
心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士
循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。
- 理学療法士(臨床経験10年以上)
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 地域糖尿病療養指導士
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