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CPX・運動処方

CPXとは?検査の流れと結果の見方入門

公開日・最終更新日:

CPX(心肺運動負荷試験)は、循環器リハビリの部署に配属されるとほぼ必ず出会う検査です。一方で、レポートに並ぶ「AT」「peak VO2」「VE/VCO2」といった略語の意味がつかめず、最初につまずきやすいところでもあります。

この記事は、CPXをこれから学ぶ医療職(PT・OT・看護師など)向けの入門編です。「CPXとは何か」「検査はどう進むか」「レポートでまず何を見るか」を、細かい判定法に入る前の全体像として整理します。心リハ指導士試験でも運動生理・運動処方は中心分野なので、試験対策の土台としても役立つはずです。

CPXとは?

CPX(cardiopulmonary exercise testing:心肺運動負荷試験)は、運動負荷試験に呼気ガス分析を組み合わせた検査です。マスクを装着して自転車エルゴメータなどで運動しながら、心電図・血圧に加えて、呼気に含まれる酸素と二酸化炭素を連続的に分析します。

これにより、運動中の

  • VO2(酸素摂取量) … 体がどれだけ酸素を使えているか
  • VCO2(二酸化炭素排出量) … 代謝の状態
  • VE(分時換気量) … どれだけ換気しているか

といったデータが得られます。心電図だけの負荷試験では「虚血や不整脈が出るか」が中心になるのに対し、CPXは「この人はどれだけ動けるのか(運動耐容能)」を数値で評価できるのが最大の特徴です。

CPXで何がわかるのか

代表的な目的は次の3つです。

  1. 運動耐容能の客観的評価 — 「息切れがある」という主観を、peak VO2などの数値で裏づけられます。
  2. 運動処方の作成 — AT(後述)にもとづいて、安全で効果的な運動強度を個別に設定できます。ガイドラインでも、心疾患患者の運動処方における運動負荷試験の活用が示されています。
  3. 重症度・予後の評価 — peak VO2やVE/VCO2は心不全の重症度や予後と関連する指標とされ、心臓移植の適応検討などにも用いられます。

検査の流れ(ざっくり全体像)

施設により違いはありますが、おおまかな流れは共通しています。

  1. 安静時データの記録 — マスク・心電図・血圧計を装着し、座位安静で基準値をとる
  2. ウォーミングアップ(無負荷こぎ) — ペダルだけを軽く回す
  3. ランプ負荷 — 負荷を直線的に少しずつ増やしていく(データ取得に必要な時間は4〜8分程度とされます)
  4. 終了・回復期の観察 — 症状・心電図・血圧をみながらクールダウン

途中で下肢疲労や息切れが強くなった時点、あるいは医師が中止基準に該当すると判断した時点で終了します。検査そのものは医師の管理下で行われるもので、リハ職としてはまず「どんな流れでデータがとられているか」をイメージできれば十分です。

レポートでまず見る3つの指標

CPXのレポートには多くの数値が並びますが、最初は次の3つを押さえましょう。

① AT(嫌気性代謝閾値)

ATは、有酸素的なエネルギー産生に、無酸素的な産生が加わり始める直前の運動強度を指します。かんたんに言えば「無理なく続けられる運動の上限の目安」です。

ATレベルの運動は、乳酸がたまりにくく、循環動態への負担も比較的小さいことから、有酸素運動の処方の基準として広く使われています。判定にはV-slope法などいくつかの方法があり、ここはCPX学習の山場なので、連載の次回でくわしく扱います。

② peak VO2(最高酸素摂取量)

peak VO2は、運動の終点に達した時点の酸素摂取量で、その人の運動耐容能を表す代表的な指標です(一般に運動終了直前の一定時間の平均値が用いられます)。

値は性別・年齢・運動習慣によって変わり、男性のほうが高く、加齢とともに低下します。そのため絶対値だけでなく、予測値に対する割合(%)や経時的な変化で解釈することが大切です。

③ VE/VCO2(換気効率の指標)

VE/VCO2は、二酸化炭素を排出するためにどれだけの換気が必要かを表す指標で、値が低いほど換気効率が良いことを意味します。レポートではVE vs VCO2 slope(傾き)やminimum VE/VCO2として記載されます。

心不全では換気効率が悪化してこの値が高くなりやすく、予後とも関連する指標とされています。正常範囲の目安は指標の種類(slopeかminimumか)や文献によって幅があるため、自施設のレポートがどちらを表示しているかを確認したうえで、成書・ガイドラインの基準と照らして解釈してください。

運動処方にどうつながる?

CPXの結果は、そのまま運動処方に落とし込めます。代表的なのは、AT時の負荷量(ワット数)や心拍数を目安に有酸素運動の強度を設定する方法です。CPXが実施できない場面では、心拍数から推定するKarvonen法や自覚的運動強度(Borgスケール)を組み合わせて調整します。

処方の具体的な組み立て方は、それだけで1本の記事になるボリュームなので、連載の後半で改めて整理します。

初学者がつまずきやすい3つのポイント

  1. 略語が多い — VO2・VCO2・VE・R(ガス交換比:VCO2/VO2)・RCP(呼吸性代償点)など。まず「何と何の比・どの時点の値か」を言葉で言えるようにすると、レポートが急に読みやすくなります。
  2. ATとRCPの混同 — どちらも「変化点」ですが、ATは代謝の転換点、RCPは換気が代償的に増え始める点で、ATより後に現れます。
  3. 数値の一人歩き — peak VO2もVE/VCO2も、単独の値だけで良し悪しを断定できません。症状・心電図・経時変化とあわせて解釈する姿勢が大切です。

まとめ

  • CPXは運動負荷試験+呼気ガス分析で、運動耐容能を数値で評価できる検査。
  • レポートはまず AT・peak VO2・VE/VCO2 の3つから。
  • ATは運動処方の目安、peak VO2は運動耐容能、VE/VCO2は換気効率と予後の指標。
  • 数値の解釈は単独で断定せず、症状・経過・ガイドラインの基準とあわせて。

次回は、いちばん質問の多いAT(嫌気性代謝閾値)の意味と判定のしかたを掘り下げます。学習全体の道筋は心リハ学習ロードマップも参考にしてください。

参考文献・出典

  1. 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン.
  2. NPO法人ジャパンハートクラブ「心肺運動負荷試験とは」
  3. NPO法人ジャパンハートクラブ「心肺運動負荷試験の呼吸循環指標」

よくある質問

Q. CPXと普通の運動負荷試験(トレッドミル負荷心電図など)は何が違いますか?

A. CPXは運動負荷に呼気ガス分析を組み合わせた検査です。心電図や血圧に加えて、酸素摂取量(VO2)などの代謝・換気の情報が得られるため、運動耐容能を客観的な数値で評価でき、運動処方にも直接つなげられる点が違いです。

Q. CPXの結果は、どの指標から見ればよいですか?

A. まずはAT(嫌気性代謝閾値)、peak VO2、VE/VCO2の3つを押さえるのがおすすめです。ATは運動処方の目安、peak VO2は運動耐容能の指標、VE/VCO2は換気効率の指標として、それぞれ役割が異なります。

この記事を書いた人

心リハラボ管理人のプロフィールイラスト

心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士

循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。

  • 理学療法士(臨床経験10年以上)
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 地域糖尿病療養指導士
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