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CPX・運動処方

CPXの換気指標|VE・死腔・呼吸の読み方

公開日・最終更新日:

CPX(心肺運動負荷試験)の換気データは、VE(分時換気量)だけでは十分に読めません。同じVEでも、1回換気量と呼吸数の組み合わせ、死腔の割合によって、肺胞に届く換気量は変わるからです。

この記事では、2026年7月18日の第32回日本心臓リハビリテーション学会学術集会「第100回記念運動処方講習会2」で聴講した「換気と関連指標」の内容をもとに、換気指標の読み方を整理します。講習会の開催情報は学会公式プログラムで確認できます。会場の様子や参加準備は心リハ学会参加レポにまとめています。

先に結論です。

  • VEを見たら、VT(1回換気量)とRR(呼吸数)の内訳を確認する
  • 浅く速い呼吸では、死腔が占める割合が大きくなり、肺胞換気量が少なくなる場合がある
  • 指標に違和感があるときは、病態だけでなくマスクリークや過換気などの測定条件も確認する

換気指標の土台は「VE=VT×RR」

最初に、この記事で使う略語を整理します。

略語正式名読むときのポイント
VE分時換気量1分間に出入りした空気の総量
VT1回換気量1回の呼吸で出入りした空気の量。機器によってはTVと表記
RR呼吸数1分間の呼吸回数
VD/VT死腔換気率1回換気量に占める生理学的死腔の割合
PETCO2呼気終末二酸化炭素分圧呼気終末のCO2分圧。換気、肺血流、換気血流不均衡などの影響を受ける
VE/VCO2 slope換気量・二酸化炭素排出量スロープ運動中のVCO2増加に対するVE増加の傾き

VEは、次の式で決まります。

VE(分時換気量) = VT(1回換気量) × RR(呼吸数)

大切なのは、同じVEになるVTとRRの組み合わせが複数あることです。VEが増えたという情報だけでは、深くゆっくり呼吸しているのか、浅く速く呼吸しているのかまでは分かりません。

同じVEでも肺胞換気量は変わる

空気の通り道には、ガス交換に直接使われない死腔があります。肺胞換気量を単純化して考えると、次の式になります。

肺胞換気量 = (VT − 死腔量) × RR

説明のため、死腔量を150 mLと仮定して比べます。実際の死腔量は体格、病態、測定方法などで異なるため、この150 mLは個々の患者に当てはめる基準値ではありません。

深くゆっくり浅く速く
VT500 mL250 mL
RR12回/分24回/分
VE6,000 mL/分6,000 mL/分
仮定した死腔量150 mL150 mL
肺胞換気量4,200 mL/分2,400 mL/分

同じ分時換気量でも深くゆっくりした呼吸と浅く速い呼吸では肺胞換気量が異なることを示す比較図

この例では、VEは同じでも肺胞換気量に約1.8倍の差が生じます。浅く速い呼吸ではVTに占める死腔の割合が大きくなるためです。ただし、息苦しさの原因を死腔だけで説明することはできません。呼吸パターンを、肺機能、循環応答、症状などと組み合わせて考えるための材料にします。

マスクと流量計の「機器死腔」

CPXでは、呼気ガスを測定するためにマスクや流量計を装着します。ERSの標準化文書では、フェイスマスクはマウスピースより死腔が大きくなることがあり、密着が不十分な場合にはリークによる測定誤差も生じうると説明されています。

機器死腔が加わったときにVTを増やして補いやすい場合もあれば、VTを増やしにくくRRが増える場合もあります。反応を一律に決めつけず、次の点を観察します。

  • マスクが顔に合い、明らかなリークがないか
  • 装着前後でVTとRRの組み合わせが変わっていないか
  • 呼吸が浅く速くなっていないか
  • 表情、息苦しさ、口腔内の乾燥などの負担がないか

CPXのマスクと流量計による機器死腔と起こりうる呼吸パターンを示す図

マスクそのものを「異常の原因」と決めつけるのではなく、患者側の反応と測定条件の両方を確認することがポイントです。

換気データは4つの視点で組み立てる

換気指標は、単独の正常値・異常値だけで分けるのではなく、患者がなぜ息苦しくなり、何が運動を制限しているのかを考える材料として使います。講習会で学んだ内容を、次の4つに整理しました。

  1. 肺機能 — 換気予備能は保たれているか、VTを増やせるか
  2. 呼吸パターン — 深くゆっくりか、浅く速いか。運動中にどう変化したか
  3. 肺循環 — PETCO2やVE/VCO2 slopeの変化を、肺血流や換気血流不均衡も含めて考えられるか
  4. 測定条件 — マスクリーク、装着直後の過換気、校正やデータの乱れがないか

CPXの換気データを肺機能・呼吸パターン・肺循環・測定条件の4視点で読む図

とくに数値が臨床像と合わないときは、病態の解釈を進める前に測定条件を確認します。PETCO2が低い場合も、「CO2をよく吐けている」と単純化せず、過換気、肺血流、換気血流不均衡、PaCO2との関係を含めて解釈します。

VE/VCO2 slopeは、VCO2の増加に対してVEがどの程度増えるかを示す指標です。高値には換気血流不均衡や化学受容器応答など複数の要因が関わるため、単独で原因を決めるものではありません。詳しい位置づけは別記事で扱う予定です。CPX全体の流れを先に確認したい方はCPXとは?検査の流れと結果の見方入門をご覧ください。

まとめ

  • VEはVT×RRで決まるため、数値だけでなく呼吸の内訳を確認する
  • 同じVEでも、死腔を除いた肺胞換気量は異なる場合がある
  • マスクと流量計の機器死腔、リーク、装着直後の過換気も測定条件として確認する
  • PETCO2やVE/VCO2 slopeは単独で断定せず、肺機能・呼吸パターン・肺循環と合わせて読む

明日から1つだけ意識するなら、VEを見たときに、「VTとRRの内訳はどうなっているか」 と確認してみてください。換気指標を暗記する前に、患者の呼吸がどのように組み立てられているかを見る習慣が、CPXを読む土台になります。

理解確認問題

問1

VEが6 L/分で同じ2人を比べたところ、一方はVTが小さくRRが多い呼吸でした。この人の換気を考えるとき、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. VEが同じなので肺胞換気量も必ず同じと判断する
  2. VT・RR・死腔量の関係から肺胞換気量を考える
  3. RRだけで換気効率を確定する
  4. VEだけで息苦しさの原因を確定する

正解:2

VEが同じでも、VTから死腔量を差し引いた有効な換気とRRの組み合わせによって、肺胞換気量は変わります。VEだけで原因を確定せず、呼吸パターンとほかの指標を合わせて考えます。

問2

CPX開始直後から換気データが臨床像と合いません。最初の確認として適切なのはどれでしょうか。

  1. マスクの密着とリーク、装着後の呼吸パターン
  2. VE/VCO2 slopeだけを用いた病態診断
  3. 数値を見ずに検査を続ける
  4. すべて患者の肺機能低下と判断する

正解:1

マスクリークや装着直後の過換気など、測定条件がデータに影響することがあります。測定条件を確認したうえで、肺機能、循環応答、症状を総合します。

問3

運動中のPETCO2が低いときの考え方として、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. CO2排出が良好だと断定する
  2. 肺循環の問題だと断定する
  3. 過換気、肺血流、換気血流不均衡などを含めて解釈する
  4. CPXでは解釈しない

正解:3

PETCO2は換気だけでなく、肺血流や換気血流不均衡などの影響も受けます。単独の値で原因を決めず、経時変化とほかの指標を組み合わせて解釈します。

あわせて読みたい

参考文献・出典

  1. 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. 2021(2026年6月20日更新).
  2. Radtke T, et al. ERS statement on standardisation of cardiopulmonary exercise testing in chronic lung diseases. Eur Respir Rev. 2019;28:180101.
  3. American Thoracic Society/American College of Chest Physicians. ATS/ACCP Statement on Cardiopulmonary Exercise Testing. Am J Respir Crit Care Med. 2003;167:211-277.
  4. 第32回日本心臓リハビリテーション学会学術集会「第100回記念運動処方講習会2」公式プログラム. 2026年7月確認.

よくある質問

Q. 分時換気量(VE)が同じなら、肺胞換気量も同じですか?

A. 同じとは限りません。VEは1回換気量(VT)と呼吸数(RR)の積ですが、肺胞換気量は1回換気量から死腔量を差し引いて考えます。同じVEでも、浅く速い呼吸では死腔の占める割合が大きくなり、肺胞換気量が少なくなる場合があります。

Q. CPXのマスクは呼吸に影響しますか?

A. フェイスマスクはマウスピースより機器死腔が大きくなることがあり、装着感やリークも測定に影響しえます。ただし反応には個人差があります。数値だけで判断せず、マスクの密着、呼吸パターン、表情や症状をあわせて確認します。

この記事を書いた人

心リハラボ管理人のプロフィールイラスト

心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士

循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。

  • 理学療法士(臨床経験10年以上)
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 地域糖尿病療養指導士
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