RCPとは?ATとの違いをやさしく解説
CPXのレポートで、ATのあとに出てくるのがRCP(呼吸性代償点)です。どちらも運動中の変化点ですが、見ている反応は同じではありません。
ATは代謝の変化、RCPはその先で起こる換気の変化を示します。ATの判定を先に復習したい場合は、ATとはからご覧ください。
RCPとは
RCP(respiratory compensation point:呼吸性代償点)は、代謝性アシドーシスへの呼吸性代償が始まる点です。この付近から、換気量(VE)がCO2排出量(VCO2)の増加を上回って増え始めます。
運動強度がATを越えてさらに上がると、乳酸に対する重炭酸イオンの緩衝が追いつかなくなり、血液のpHが低下し始めます。体は換気を増やしてCO2の排出を促し、pHの低下を和らげようとします。換気で酸そのものを吐き出しているわけではありません。

表記は資料によって違います。『心臓リハビリテーション必携』では主に「RC point(呼吸性代償開始点)」、2021年改訂版ガイドラインでは「RC」と書かれています。指している点は同じです。
ATとRCPは何が違うのか
| 見方 | AT(嫌気性代謝閾値) | RCP(呼吸性代償点) |
|---|---|---|
| 生理的な意味 | 有気的代謝に無気的代謝が加わる手前の変化点 | 代謝性アシドーシスへの呼吸性代償が始まる変化点 |
| 呼気ガスの主な手がかり | VE/VO2が最低値から上昇に転じ、VE/VCO2はまだ上昇しない | VE/VCO2が最低値から上昇に転じ、PETCO2が最高値から低下に転じる |
| 位置 | 低い強度側 | ATより高い強度側 |
| 臨床での位置づけ | CPXに基づく有酸素運動処方の代表的な基準 | ATより高い強度域の換気応答を示す。運動強度の基準として参照されることもある |
ATとRCPの間には、重炭酸による緩衝が働いて動脈血のCO2分圧が大きく変わらない区間があり、「等二酸化炭素性緩衝(isocapnic buffering)」と呼ばれます。この区間ではVE/VO2が上がり始める一方、VE/VCO2はまだ上がりません。ATを判定するときに使う「VE/VO2は上がるがVE/VCO2は上がらない」という見方は、この区間の反応を見ています。
RCPを判定できる場合、運動強度の順序は通常、AT→RCP→peakです。peak VO2は、検査中に得られた最も高い酸素摂取量を指します。
RCPを見る理由
RCPは、ATを越えた高い強度域で換気応答がどう変化したかをみる指標です。検査終了までに呼吸性代償が現れたかどうかの確認にも使います。
2021年改訂版の心血管疾患リハビリテーションガイドラインでは、CPXを用いた有酸素運動処方の代表的な基準としてATが示されています。一方、『心臓リハビリテーション必携』には、日本やヨーロッパではATやRC pointを基準に運動強度を処方することが多い、と書かれています。RCPは判定だけの補助指標ではありません。
ただし、RCPが誰にでも当てはまる「高強度運動の上限」になるわけではありません。同じ『必携』は、心不全患者の運動療法ではATを運動強度の上限とすることが妥当だとしています。どの基準で処方した場合でも、その強度で虚血や危険な不整脈、血圧の異常な上昇がないかを確認します。
RCPはどこを見て判断するか
RCPを読むときは、VE/VCO2とPETCO2を同じ時間軸で確認します。VE/VCO2は一定量のCO2を排出するのに必要な換気量(換気効率)、PETCO2は息を吐き終える付近のCO2分圧です。
VE/VCO2は運動中に下がっていき、RCP付近で最低値(min VE/VCO2)をとってから上昇に転じます。PETCO2はRCP付近で最高値をとり、その後は代償性の過換気を反映して下がります。1呼吸だけの揺れで決めず、2つの変化が同じ時期から続いているかを照合します。
VE/VO2が上がり始めるのは、主にAT付近です。RCP以後は上がり方がさらに急になりますが、VE/VO2だけでRCPとは決めません。3つの指標が向きを変える位置をまとめると、次のようになります。

VE vs. VCO2 slopeは、横軸をVCO2、縦軸をVEとした関係を直線回帰して求める傾きで、レポートには1つの数値として載ります。RCP付近までの直線領域を回帰する方法がありますが、算出区間は解析方法によって異なり、運動開始から最大負荷までを用いる方法もあります。RCP以後は傾きが急になることがあるため、含める区間によって値が変わり得ます。「傾きが変わる点」と「slopeの数値」は分けて読み、レポートの算出条件を確認します。

RCPに達する前に運動が終了した場合や、データの変化が明瞭でない場合には、RCPを判定できないこともあります。その場合は無理に1点を決めず、検査の到達強度、呼気ガスの推移、中止理由を確認します。実際のグラフの読み方は、CPX実技の測定と解析で扱っています。
まとめ
- RCPは、代謝性アシドーシスへの呼吸性代償が始まり、換気がVCO2の増加を上回って増え始める点です。
- 通常はATより高い強度に位置し、両者の間には等二酸化炭素性緩衝の区間があります。
- 判定の手がかりは、VE/VCO2の最低値とPETCO2の最高値です。2つの変化を照合します。
- 運動強度の基準として参照されることもありますが、誰にでも当てはまる上限ではありません。
レポートでは、AT付近でVE/VO2が上がり始めたか、その先でVE/VCO2とPETCO2が向きを変えたかを順に追います。CPXレポートの基本3指標(AT・peak VO2・VE/VCO2)は、CPXとはで整理しています。
理解確認問題
理解度を確かめるための当サイトオリジナル問題です。学会の試験問題ではありません。
問1
ATとRCPの違いを表す説明として、最も適切なのはどれですか。
- ATは換気の変化、RCPは代謝の変化を示す
- ATは代謝の変化、RCPはその先の換気の変化を示す
- ATとRCPはどちらも換気の変化を示し、現れる順番だけが異なる
- ATとRCPはどちらも代謝の変化を示し、判定指標だけが異なる
正解: 2
ATとRCPはどちらも運動中の変化点ですが、示す生理的な変化と現れる順番が異なります。通常はATが先に現れ、その後のより高い運動強度でRCPが現れます。
問2
RCP付近の代表的な変化の組み合わせはどれですか。
- VE/VCO2が持続的に上昇し、PETCO2が持続的に低下する
- VE/VO2が上昇し始め、VE/VCO2はまだ大きく上昇しない
- VE/VCO2は上昇するが、PETCO2は変化しない
- VE/VCO2とPETCO2が1呼吸だけ同時に変化する
正解: 1
RCP付近では、VE/VCO2が最低値から上昇に転じ、PETCO2が最高値から低下に転じます。この2つを照合して判定し、一時的な揺れや単一の指標だけでは判断しません。
問3
RCPに達する前に運動が終了し、VE/VCO2とPETCO2の変化も明瞭でない場合、適切な対応はどれですか。
- 検査終了時点をRCPとする
- VE/VCO2が最も高い点をRCPとする
- RCPは判定困難とし、到達強度や中止理由も確認する
- ATから一定時間後をRCPと推定する
正解: 3
RCPが明瞭でない場合は、無理に1点を決めません。検査の到達強度、呼気ガスの推移、中止理由を合わせて確認します。
参考文献・出典
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン.
- 日本心臓リハビリテーション学会 編. 指導士資格認定試験準拠 心臓リハビリテーション必携. 2022年増補改訂版. 日本心臓リハビリテーション学会; 2022. Ⅲ章「心臓リハビリテーションにおける負荷試験と評価方法」pp.200-207, 210-211, 214.
- 前田知子, 伊東春樹. NPO法人ジャパンハートクラブ「心肺運動負荷試験の呼吸循環指標」(2026年7月閲覧).
- Petek BJ, Churchill TW, Gustus SK, et al. Characterization of ventilatory efficiency during cardiopulmonary exercise testing in healthy athletes. Eur J Prev Cardiol. 2023;30(5):e21-e24.
- 日本循環器学会「循環器学用語集: isocapnic buffering」(2026年8月閲覧).
よくある質問
Q. RCPとATはどちらが先に現れますか?
A. 通常はATが先に現れ、さらに運動強度が上がるとRCPが現れます。ただし、すべての検査でRCPを明瞭に判定できるとは限りません。
Q. RCPは必ず判定できますか?
A. 必ず判定できるわけではありません。RCPに達する前に運動が終了した場合や、呼気ガスデータの変化が明瞭でない場合は、RCPを決められないことがあります。VE/VCO2やPETCO2など、複数の変化を照合します。
この記事を書いた人
心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士
循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。
- 理学療法士(臨床経験10年以上)
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 地域糖尿病療養指導士
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