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心リハの基礎

METsとは?生活・運動強度の目安

公開日: 最終更新日:

METs(メッツ)は、生活動作や運動に必要なエネルギー量を表し、活動の強さを比べる物差しです。運動療法の強度は、個々の運動耐容能にもとづく相対値で決めます。心リハでは、METsに症状や病態などを合わせて、活動の可否やリスクを判断します。この記事では、活動の目安、ガイドラインに登場する2・6・6〜7 METの使い分け、peak VO2との関係を整理します。

安静座位からジョギングまでの代表的な活動を、楽からきついへの矢印に沿って強度の順に並べた図

図1 当サイト作成。「改訂第2版 身体活動のメッツ(METs)表 成人版」などをもとに整理。

METsとは

MET(metabolic equivalent:代謝当量)は、安静時を「1」としたときに、その活動が何倍のエネルギーを使うかを表す単位です。複数形としてMETs(メッツ)とも表記されます。

  • 1 MET … 安静座位に相当する基準
  • 3 MET … 安静時の約3倍のエネルギーを使う活動
  • 6 MET … 安静時の約6倍のエネルギーを使う活動

標準METでは、1 METを酸素摂取量3.5 mL/kg/minとして扱います。これは共通化のために決めた値です。個人の実測安静時酸素摂取量とはずれることがあるため、目安として使います。

数値が大きいほど必要なエネルギーが多い活動で、運動だけでなく、家事や仕事などの生活動作の強度も表せます。

代表的な活動のMETs目安

代表的な活動の標準METによる目安です。値は速度や傾斜などの条件によって変わるため、大まかな強度帯として扱ってください。

活動標準METのおおよその目安
安静座位1
非常にゆっくりした平地歩行・身の回りの動作2〜3
ふつうの速さの平地歩行・掃除機掛けなどの家事3〜4
平地の速歩・ゆっくりした階段上り4〜6
一般的な階段上り・ジョギング6〜8

隣り合う区分は数値の範囲が一部重なり、実施条件で前後します。

標準METによる一般的な目安と、個人にとっての相対的な運動強度・活動の安全性は区別して判断します。

表と図は、「改訂第2版 身体活動のメッツ(METs)表 成人版」などを参考に、活動条件による幅を踏まえて当サイトが大まかな強度帯に要約・再構成したものです。成人版は19〜59歳が対象のため、高齢者では「身体活動のメッツ(MET60+)表 高齢者版」も参照します。

入浴や性生活などの生活動作でも、METは判断材料の一つです。再開の可否は、病態の安定性・症状・虚血・血圧や不整脈・治療後の制限と、主治医の指示をあわせて確認します。

細かな数字の丸暗記より、条件と順序を押さえる

活動別のMET値は、条件によって幅があります。細かな数値を丸暗記するより、速度・傾斜・荷物などの条件と、活動どうしのおおよその並び順を押さえるほうが実用的です。一方、ガイドラインに登場する2、6、6〜7 METは、それぞれの文脈と条件を理解しておく必要があります。

身の回りの動作 → ふつうの平地歩行 → 平地の速歩 → 階段上り・ジョギング、という順に必要なエネルギーは増える傾向があります。この順序が頭に入っていれば、患者さんから「掃除機はかけていいですか」「駅の階段は上れますか」と聞かれたとき、すでに行っている活動と比べてどのあたりに位置するかを考えられます。

現場では「階段は一律に何MET」と決めるのではなく、「どの速さで、荷物や手すりの有無など、どのような条件で行うか。何段を、どのくらいの時間続けるか」を確認することが重要です。

ガイドラインに登場する2・6・6〜7 MET

心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)では、2、6、6〜7 METを、それぞれ異なる対象と目的で使います。各数値は、対応する対象・条件と合わせて読みます。

数値文脈要点
2 MET低い虚血閾値平地のゆっくり歩行程度で心筋虚血が誘発される病態は、積極的な運動療法の絶対的禁忌に該当する
6 MET運動療法のリスク分類運動能力や虚血が現れる強度を評価する指標の一つ。6 METだけでクラスは決まらない
6〜7 MET待機的冠動脈ステント留置後の適応十分な抗血小板薬治療下で合併症のない待機的ステント留置例では、この運動強度以下で直ちに開始できる場合がある

2、6、6〜7 METが、それぞれ低い虚血閾値、リスク層別化、待機的冠動脈ステント留置後という異なる文脈で使われることを示す図

図2 当サイト作成。心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)をもとに整理。

図の3つの数値は、連続した活動許可基準ではなく、それぞれ異なる場面での判断材料です。

2 MET — 低い虚血閾値を示す基準

心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)は、積極的な運動療法の絶対的禁忌の筆頭に、不安定狭心症とならべて、平地のゆっくり歩行(2 MET)で誘発されるような閾値の低い心筋虚血を挙げています。

2 METという活動強度そのものが禁忌なのではなく、その程度の軽い負荷で心筋虚血が生じる病態が問題です。胸痛などの症状がない心筋虚血もありうるため、症状と虚血の評価を合わせて判断します。該当する場合は病態の治療と再評価を優先します。

6 MET — リスク分類に用いる複数指標の一つ

クラスB・Cは運動療法中のリスク分類で、治療の推奨クラスI・IIとは別物です。ここでは運動中の監視の程度を決めるB・Cを読みます。同ガイドラインの運動療法リスク分類では、6 METが次のように使われています。

  • クラスBの臨床的特徴は7項目あり、そのすべてを満たす必要がある。うち2項目が「運動能力が6 MET超」「安静時または6 MET以下の運動負荷試験で心筋虚血・狭心症を認めない」
  • クラスCの臨床的特徴は8項目で、そのいずれかに該当すれば当てはまる。うち2項目が「運動耐容能が6 MET未満」「6 MET未満で狭心症または虚血性ST低下(心電図上で心筋虚血を示唆する変化)」

残りの項目は、NYHA心機能分類(身体活動時の症状と制限による心機能分類)、心不全の有無、運動時の収縮期血圧の反応、心室頻拍の有無、運動のきつさを自分で感じ取り、ペースを調整できる能力などです。クラスBは全項目を満たして初めて成立するため、6 METだけでクラスB・Cを決めることはできません。また同ガイドラインの不等号はクラスBが「6 MET超」、クラスCが「6 MET未満」であり、ちょうど6 METを数値だけでどちらかに分類する記載ではありません。

リスク分類に応じて監視方法は変わりますが、METはその判断材料の一つです(→心リハのリスク管理(記事準備中))。階段は上るペース、手すりの使用、荷物の有無などで強度が変わり、段数や継続時間は総運動量に影響するため、「階段を上れるか」だけで6 MET超の運動能力やリスククラスを判断することもできません。

6〜7 MET — 待機的冠動脈ステント留置後の適応に関する記載

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の運動開始時期には、明確な一律基準が示されているわけではありません。一方、ガイドラインでは、次の条件を満たす例について、翌日からの心リハが可能とする報告を示したうえで、「6〜7 METの運動強度以下であれば、直ちに運動療法を開始することも可能である」としています。

  • 待機的(予定して行う)冠動脈ステント留置後である
  • 十分な抗血小板薬治療を受けている
  • 合併症がない

この記載を、緊急PCI後や合併症例を含むすべての患者にそのまま当てはめることはできません。病態、残存虚血、心機能、不整脈、穿刺部などを評価したうえで個別に判断します。

peak VO2とのつながり

心肺運動負荷試験(CPX)で得られるpeak VO2(最高酸素摂取量)は、標準METへ換算できます。標準METでは1 METを3.5 mL/kg/minとして扱うため、

peak VO2(mL/kg/min)÷ 3.5 ≒ 最高運動時の能力を標準METで表した値

と計算できます。たとえばpeak VO2が21 mL/kg/minなら、標準METでは約6 METです。換算値は最高運動時の能力の目安で、その強さの生活動作を続けられる上限とは別です。

生活指導や運動処方では、症状、虚血、不整脈、血圧反応、AT(嫌気性代謝閾値)、Borg指数、活動時間などを合わせて判断します。CPXから得た運動能力は、同ガイドラインのリスク分類を判断する材料の一つにもなります(→peak VO2とは)。

peak VO2を標準METへ換算した後、症状・虚血、循環反応、AT・Borg指数、実施条件を合わせて個別判断する流れを示す図

図3 当サイト作成。peak VO2の標準MET換算と、個別判断の流れを整理。

同じ活動でもMETsは変わる

同じ「歩行」でも、速さ・傾斜・荷物の有無で強度は変わります。入浴も、湯温や浴槽の出入りの動作、脱衣所との温度差などで負担が変わります。

つまり活動の名前だけでMETsが決まるわけではありません。患者さんに説明するときは、活動名だけでなく「どのくらいの速さで」「どんな条件で」まで一緒に確認する必要があります。「散歩は大丈夫です」と伝えたつもりが、実際には坂道を早足で歩いていた、ということが起こりえます。

同じ散歩でも速さ、傾斜、荷物、継続時間、環境や体調によって負担が変わることを示す図

図4 当サイト作成。散歩の実施条件と負担の関係を整理。

心リハでの活用

METsは次のような場面で役立ちます。

  • 生活指導 … 生活動作に必要なおおよそのエネルギー量を比較する材料にする
  • 生活動作への橋渡し … 処方した運動強度が、生活のどのあたりの動作にあたるかを説明する
  • リスクの層別化 … 運動耐容能をMETsで表し、必要な監視レベルの判断材料にする
  • チーム内の共有 … 患者さん・家族・多職種に、活動の強さを共通の言葉で伝える

運動強度そのものは、個々の運動耐容能に対する相対値で処方します。ガイドラインは、一般には「低強度=3.0 MET未満/中強度=3.0〜6.0 MET/高強度=6.0 MET以上」と表現されるものの、心血管疾患患者の運動療法ではこうした一般的な値は用いず、運動負荷試験で評価した個々の運動耐容能とリスクをもとに、最大強度に対する相対値で処方するとしています。

数値そのものより、「活動に必要なエネルギー量を共通の物差しで語れる」ことがMETsの価値です。

使うときの注意点

  • 活動表の標準METは一般的な目安です。年齢、体格、運動耐容能、環境、やり方によって、本人にとっての相対的な負担は変わります。
  • peak VO2から換算したMETは最高運動時の能力の概算であり、安全に持続できる生活強度の上限ではありません。
  • 同じMETでも、その日の体調によって負担の感じ方は変わります。症状、血圧、心拍・不整脈、虚血所見、AT、自覚的運動強度(→ボルグスケール(記事準備中))などと合わせて判断します。
  • 生活動作や運動の可否は、病態と治療経過を踏まえて個別に判断します。

まとめ

  • METsは、生活動作の強さを比べる物差し。安静時を1としたときの活動に必要なエネルギー量を表す。標準METでは1 METを3.5 mL/kg/minとして扱い、個人の実測安静時酸素摂取量とはずれることがあるため、目安として使う。
  • 運動療法の強度は、運動負荷試験で評価した個々の運動耐容能にもとづく相対値で決める。活動別のMET値は条件によって幅があるため、細かな数値より条件と順序を押さえる。
  • ガイドラインでは、2 METで心筋虚血が誘発される低い虚血閾値、リスク層別化における6 MET、待機的冠動脈ステント留置後の適応における6〜7 METの運動強度以下という、それぞれ異なる文脈で用いられる。
  • peak VO2÷3.5で最高運動時の能力を標準METに換算できるが、安全に持続できる活動強度を直接示すものではない。
  • 同じ活動名でも条件でMETsは変わる。速さ・傾斜・荷物まで確認する。

理解確認問題

問1

運動療法の禁忌に「閾値の低い心筋虚血」が挙げられていますが、ガイドラインではこれをどのような水準として説明しているでしょうか。

  1. ジョギング(6〜8 MET)で誘発される心筋虚血
  2. 平地のゆっくり歩行(2 MET)で誘発される心筋虚血
  3. 階段昇降(4〜8 MET程度)で誘発される心筋虚血
  4. METsとは無関係に定義されている
正解と解説を見る

正解:2

心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)では、平地のゆっくり歩行(2 MET)で誘発される心筋虚血を低い虚血閾値として示しています。このような病態は、積極的な運動療法の絶対的禁忌に該当します。2 METという活動強度自体が禁忌なのではありません。

問2

CPXでpeak VO2が21 mL/kg/min(約6 MET)と得られた患者さんです。この値だけで6 METの生活動作を安全に続けられると判断できない理由として、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. peak VO2を標準METに換算することはできないため
  2. 換算値は最高運動時の能力の目安であり、生活動作の継続には症状や実施条件などもあわせて判断するため
  3. 活動名が同じなら実施条件にかかわらず負担が一定になるため
  4. peak VO2の値だけで、その日の体調も判断できるため
正解と解説を見る

正解:2

標準METでは1 METを3.5 mL/kg/minとして扱うため、21÷3.5=6で、最高運動時の能力を約6 METと表せます。換算値は最高運動時の能力の目安で、その強さの生活動作を続けられる上限とは別です。症状、虚血、不整脈、血圧反応、AT、Borg指数、活動時間などをあわせて判断します。

問3

患者さんから「散歩を再開してもよいですか」と質問されました。METsを使って説明するときの考え方として、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. 表のMETs値は固定なので、活動名だけで可否を判断してよい
  2. 同じ活動でも速さや条件で強度が変わるため、どのくらいの速さ・条件で行うのかまで確認する
  3. METsの値が分かれば、その日の体調は考慮しなくてよい
  4. 生活動作の可否はリハ職が単独で最終判断する
正解と解説を見る

正解:2

同じ活動でも、速さ・傾斜・荷物の有無などの条件で強度は変わります。活動名だけで判断せず、条件まで確認することが必要です。またその日の体調によって負担の感じ方は変わり、最終的な可否は医師の判断や個々の状態をふまえます。

あわせて読みたい

参考文献・出典

  1. 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. 第2章1「定義」(p.18)、第3章1.3.2「強度」(p.29)、第3章1.5 表20(pp.34-35)、第3章2.2 表24(p.37)、第4章2.4「PCI後の適応」(p.44).
  2. 国立健康・栄養研究所ほか. 改訂第2版 身体活動のメッツ(METs)表 成人版. 2024年.
  3. 国立健康・栄養研究所ほか. 身体活動のメッツ(MET60+)表 高齢者版. 2024年.
  4. Compendium of Physical Activities. Corrected METs - Adults. 2026年8月閲覧.

よくある質問

Q. METsとpeak VO2はどう関係しますか?

A. 標準METでは1 METを3.5 mL/kg/minとして扱うため、peak VO2を3.5で割ると最高運動時の能力を標準METで表せます。ただし、換算値と同じ強度の生活動作を安全に続けられるという意味ではありません。症状、虚血、血圧反応、不整脈、AT、Borg指数などを合わせて判断します。

Q. METsの値は覚えないといけませんか?

A. 活動別の細かな数値を丸暗記するより、条件と強度の順序を理解するほうが実用的です。一方、ガイドラインでは、2 METで心筋虚血が誘発される低い虚血閾値は積極的運動療法の絶対的禁忌、6 METはリスク層別化の一指標、6〜7 METの運動強度以下は十分な抗血小板薬治療下で合併症のない待機的冠動脈ステント留置後の早期運動という、異なる文脈で用いられます。

Q. 同じ活動なら常に同じMETsですか?

A. いいえ。同じ「歩行」でも速さ・傾斜・荷物の有無で強度は変わります。入浴も湯温や動作、脱衣所との温度差で負担が変わります。活動名だけでMETsが決まるわけではないため、患者さんに説明するときは条件まで一緒に確認する必要があります。

この記事を書いた人

心リハラボ管理人のプロフィールイラスト

心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士

循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。

  • 理学療法士(臨床経験10年以上)
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 地域糖尿病療養指導士
プロフィール詳細 →

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