呼吸療法認定士と心リハ指導士、どっちを先に取る?
情報確認日:2026年7月31日|対象:第31回(2026年度)/第27回心リハ指導士認定試験(2026年度)
どの記事を読めばいいか
- 取ろうか迷っている → 第1記事(価値・給料・診療報酬)
- 自分が受けられるか知りたい → 第2記事(受験資格)
- 申し込み方と費用を知りたい → 第3記事(申込から認定証まで)
- これから勉強する → 第4記事(試験内容と勉強法)
- もう持っている → 第5記事(更新と50点の集め方)
- 心リハ指導士と迷っている → この記事
全部読む必要はありません。今の自分に当てはまる記事だけで足ります。
結論
- 決め手は1つ。今の職場で、心リハの自験例を10例書けるかです。
- 書ける職場なら、心リハ指導士から。 求人票で単独に名指しされるのはこちらです。
- 書けない職場なら、呼吸療法認定士から。 症例レポートも学会入会も不要で、1年で形になります。
- 呼吸の知識は循環器でも効きます。遠回りに見えて、心リハ指導士の土台になります。
「呼吸療法認定士と心リハ指導士、どっちから取ればいいですか」
循環器に関わる若手からよく出る質問です。結論から言うと、今どこで働いているかで答えが変わります。両方いずれ取るとしても、順番を間違えると回り道になります。
この記事では、まず制度の違いを整理します。そのあとで、働く場所別におすすめの順番を提案します。制度の話は公式資料から、順番の提案は筆者の考えです。
違いは、この3つに集約できる
細かい比較表を見る前に、決定的な差を押さえてください。
1. 学会に入る必要があるか
呼吸療法認定士は不要です。学会に入っていなくても受けられます。
心リハ指導士は必要です。しかも、申請の時点で2年以上続けて日本心臓リハビリテーション学会の会員である必要があります。休会していた期間は数えてもらえません。
つまり、心リハ指導士は思い立ってから受験できるまでに最低2年かかります。逆に言えば、入会だけ先に済ませておけば、その2年は自動的に進みます。
2. 症例報告が要るか
呼吸療法認定士は不要です。書類は実務経験証明書だけです。
心リハ指導士は自験例10症例の報告書を出します。内容も審査されるので、記載が足りなければその年は受けられません。
ここがいちばんの壁です。10症例を出すには、心臓リハビリテーションを実際に担当できる職場にいる必要があります。 心リハをやっていない病院にいると、そもそも書けません。
3. 更新の条件
どちらも有効期間は5年ですが、中身が違います。
- 呼吸療法認定士:50点を集めて申請。更新登録料3,500円
- 心リハ指導士:50単位に加えて、5年のあいだに学術集会へ1回以上参加。更新料10,000円+学会年会費
心リハ指導士の「学術集会へ1回以上」は、当日のライブ配信か現地参加に限られます。オンデマンド視聴では認められません。日程を空ける必要があるぶん、維持のハードルはやや高めです。
制度の比較
| 比べるところ | 呼吸療法認定士 | 心リハ指導士 |
|---|---|---|
| 認定団体 | 3学会合同呼吸療法認定士認定委員会 | 日本心臓リハビリテーション学会 |
| 学会への所属 | 不要 | 必要(2年以上継続) |
| 症例報告 | 不要 | 必要(10症例) |
| 実務経験 | 免許取得後2年以上+12.5点 | 心リハ指導の実地経験1年以上、または研修制度の受験資格認定証 |
| 試験時期 | 11〜12月の日曜日 | 学術集会の翌日(2026年度は7月20日) |
| 試験形式 | マークシート100問/2時間50分 | マークシート50問/60分 |
| 取得費用 | 33,000〜43,000円 | 受講料10,000円+審査料15,000円+学会年会費 |
| 有効期間 | 5年 | 5年 |
| 更新の条件 | 50点 | 50単位+学術集会に1回以上 |
| 更新費用 | 3,500円 | 10,000円+年会費 |
公式出典:第31回(2026年)実施要領(PDF)、第27回心臓リハビリテーション指導士認定試験のご案内(PDF)、更新に必須の条件
合格率
| 資格 | 直近の合格率 |
|---|---|
| 呼吸療法認定士(理学療法士) | 67〜73%(第26〜30回) |
| 心リハ指導士(全体) | 71.7%(第26回・2025年) |
| 心リハ指導士(理学療法士) | 67.2%(第26回・470名中316名) |
公式出典:医療資格別合格率推移(PDF)、第26回心臓リハビリテーション指導士認定試験講評
試験そのものの難易度は、大きくは変わりません。 差が出るのは、受験にたどり着くまでの準備です。
どちらも診療報酬では「経験の例」
どちらか一方だけが有利、ということはありません。厚生労働省の疑義解釈(平成18年3月31日・その3の問94)では、この2つが対になる形で並んでいます。
- 心大血管疾患リハビリテーションの「経験」の例 → 心臓リハビリテーション指導士の研修
- 呼吸器リハビリテーションの「経験」の例 → 呼吸療法認定士の研修
公式出典:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その3)」(PDF) 19〜20ページ
どちらも「必須要件」ではなく「例示」です。この距離感は第1記事で詳しく扱っています。
求人票では、どう扱われているか
資格は「必須」ではなく、たいてい「歓迎」の欄に書かれています。実際の書かれ方を見てみます。
ある赤十字病院のリハビリテーション技師 採用ページより
応募資格:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士いずれかの免許取得済の方 心臓リハビリテーション指導士資格保有者歓迎
ここから読み取れることが2つあります。
資格は応募の条件ではありません。 免許さえあれば応募できます。ただし、同じくらいの経歴の人が並んだとき、持っている側が有利になる。そういう位置づけです。
そして、循環器の求人で単独に名前が挙がるのは心リハ指導士のほうです。 呼吸療法認定士は「認定理学療法士、心臓リハ指導士、呼吸療法認定士等の資格をお持ちの方は優遇」のように、まとめて並記されることが多くなります。
| 呼吸療法認定士 | 心リハ指導士 | |
|---|---|---|
| 求人での扱い | 他資格とまとめて「等」に入りやすい | 単独で名指しされる |
| 症例レポート | 不要 | 必要(自験例10例) |
| 学会入会 | 不要 | 2年以上の継続在籍が必要 |
| 思い立ってから受験まで | 最短1年 | 学会員でなければ2年以上 |
| 維持コスト | 5年で1万円前後に抑えられる | 年会費がかかり続ける |
注意
求人での扱いは、筆者が見た求人票の一例です。すべての施設に当てはまるとは限りません。応募先の募集要項で確認してください。
評価は高いけれど、思い立ってすぐには受けられない。 これが心リハ指導士です。学会員歴2年という条件があるので、取ると決めた時点で入会しておかないと、その分だけ後ろにずれます。
呼吸の知識は、循環器でも効く
「循環器なのに呼吸の資格を取る意味あるの」と聞かれます。あります。 心臓リハビリテーションを深くやるほど、呼吸生理の知識が必要になるからです。
ここは他の解説記事がほとんど触れない部分なので、具体的に書きます。
| 場面 | 呼吸の知識がどう効くか |
|---|---|
| CPXの解釈 | ATは心拍出量だけでなく、換気能が落ちても下がります。両方分からないと、目の前の数字がどちらの問題なのか判断できません |
| 換気効率の評価 | VE/VCO2スロープや換気当量は、心不全の重症度指標であると同時に呼吸の指標でもあります。呼吸生理を知らないと数字が読めません |
| 心不全の急性期 | NPPVをつけたまま離床していいかを、自分で判断できます |
| NPPVの理解 | NPPVは前負荷・後負荷を下げる、つまり循環への介入でもあります。心原性肺水腫で早期にCPAPやBiPAPが入る理由も、ここで説明がつきます |
| 酸素療法 | SpO2・呼吸数・呼吸音・修正Borgを組み合わせた離床判断ができます |
| 心臓外科術後 | 無気肺や肺炎が離床のスピードを左右します。術後管理は呼吸の領域と重なります |
用語のミニ解説
- CPX(心肺運動負荷試験):運動しながら呼気ガスを測り、心臓と肺の能力をあわせて評価する検査。
- AT(嫌気性代謝閾値):運動強度を決める指標のひとつ。安全な運動処方の基準になります。
- NPPV:気管に管を入れず、マスクで行う人工呼吸。
呼吸療法認定士は、循環器の人が呼吸を体系的に学び直す入口として使えます。心リハ指導士の勉強と重なる部分も少なくありません。
筆者の提案:働く場所で順番を決める
ここからは筆者の考えです。公式に示された順番ではありません。
判断のポイントは1つだけです。今の職場で、心リハの自験例を10例書けるか。
| 書ける職場 | 書けない職場 |
|---|---|
| 心リハ指導士から | 呼吸療法認定士から |
| 症例10例は日常業務で集まる。学会にもすぐ入れる環境のはず。求人でも単独で名前が挙がるので、先に取ったほうが得 | 10例の要件がそのまま壁になる。先に呼吸療法認定士を取れば症例レポートなしで1年で形になり、その間に学会へ入って条件を育てられる |
| ↓ | ↓ |
| 呼吸療法認定士(必要になったら) | 心リハ指導士(循環器に進むなら) |
急性期で、心リハに関われる職場にいるなら → 心リハ指導士から
理由は3つあります。
1. 症例が今しか集まらない。 10症例の自験例報告は、心臓リハビリテーションを担当していないと書けません。今その環境にいるなら、そこが最大の資産です。異動や転職で環境が変わると、一気に難しくなります。
2. 学会員歴2年の時計を、早く回し始めたい。 入会してから2年たたないと受験できません。「取ろう」と思った時点で入会しておかないと、その2年がまるまる待ち時間になります。
3. 診療報酬の届出で効くのは、心大血管リハのほうです。 心リハの施設基準で「経験を有する」職員として説明する材料になります。急性期病院なら、ここが実務に直結します。
呼吸療法認定士は、症例報告も学会入会も要らないのであとからでも間に合います。順番を逆にすると、心リハ指導士の受験が2年以上遠のきます。
回復期〜慢性期にいる、または心リハをやっていない職場なら → 呼吸療法認定士から
こちらのほうが多数派だと思います。
症例報告10例のハードルが、現実的に高いからです。 心リハをやっていない病院にいると、そもそも自験例が集まりません。「いつか心リハ指導士を」と思いながら、何年も動けないという状態になりがちです。
その点、呼吸療法認定士は実務経験2年と12.5点だけで挑戦できます。学会に入る必要もありません。回復期にも慢性期にも、誤嚥性肺炎、COPD、心不全、廃用症候群と、呼吸を診る場面はいくらでもあります。学んだことがすぐ使えます。
そして、ここが大事なのですが、呼吸療法認定士で学ぶ内容は心リハ指導士の土台になります。血液ガス、酸素療法、運動時の換気応答。CPXを読むときも、心不全の呼吸困難を評価するときも、同じ知識を使います。
だから、呼吸療法認定士 → (急性期・心リハの職場へ移ったら)心リハ指導士という順番が、いちばん無難です。回り道に見えて、実は最短距離になることが多い。資格が途切れず積み上がるので、学習のモチベーションも保ちやすくなります。
まとめると
| 今いる場所 | 先に取るもの | 理由 |
|---|---|---|
| 急性期で心リハに関われる | 心リハ指導士 | 症例と学会員歴の時計が、今しか進まない |
| 急性期だが心リハはない | 呼吸療法認定士 | 人工呼吸器・酸素療法を毎日使う |
| 回復期・慢性期 | 呼吸療法認定士 | 症例報告が不要で、今すぐ動ける |
| 訪問リハ | 呼吸療法認定士 | 排痰・呼吸介助にそのまま効く |
| どこにいるか分からない・迷っている | 呼吸療法認定士 | 維持費が安く、やめるときの損も小さい |
そのあとの選択肢
循環器では、呼吸療法認定士 → 心リハ指導士 → 心不全療養指導士と重ねていく人が増えています。
心不全療養指導士は日本循環器学会が2021年に作った資格で、多職種が対象です。取得には学会入会、eラーニングの受講、症例報告、そして12月の認定試験が必要です。有効期間は5年。
公式出典:日本循環器学会「心不全療養指導士」
3つ全部を追う必要はありません。ただ、同じ患者を違う角度から見る訓練にはなります。呼吸で見る、運動で見る、生活で見る。
なお、算定に直結するという点では、がんリハビリテーション研修がいちばん分かりやすい資格です。修了者がいないとがん患者リハビリテーション料が取れないので、病院から歓迎されやすい。循環器とは領域が違いますが、頭の片隅に置いておくといいかもしれません。
よくある質問
Q. 両方取る意味はありますか
心不全の呼吸評価、心原性肺水腫のNPPV、心臓外科術後の肺合併症。重なる場面は少なくありません。ただし維持コストも2倍になります。5年ごとに、呼吸療法認定士が50点+3,500円、心リハ指導士が50単位+10,000円+年会費です。使う場面があるかで判断してください。
Q. 同じ年に両方受けられますか
日程上は可能です。心リハ指導士が7月、呼吸療法認定士が11〜12月なので、試験は重なりません。ただし心リハ指導士の症例報告と、呼吸療法認定士の講習会受講が同じ時期に重なります。現実的にはおすすめしません。
Q. 心リハ指導士のほうが上位資格ですか
そういう関係ではありません。専門領域が違うだけです。呼吸を診るなら呼吸療法認定士、運動処方とリスク管理なら心リハ指導士。どちらが上ということはありません。
Q. 認定理学療法士とはどう違いますか
認定理学療法士は日本理学療法士協会の制度で、協会員であることが前提です。制度が改定されているため、最新の要件は協会の公式情報で確認してください。この記事では扱っていません。
まとめ
違いは3つ。学会に入るか、症例報告が要るか、更新の条件です。
順番を決めるときは、シンプルにこう考えてください。
- 今の職場で、心リハの自験例を10例書けるか
- 書けるなら → 心リハ指導士を先に。学会入会は今すぐ
- 書けないなら → 呼吸療法認定士を先に。土台の知識になります
どちらを選んでも、取ったあとに使う場面があるかがいちばん大事です。使わない資格は、更新料だけが残ります。
この記事について
この記事は、3学会合同呼吸療法認定士を保有する理学療法士が、公式資料にあたって作成しています。心臓リハビリテーションとCPX(心肺運動負荷試験)を専門としています。
制度・日程・費用・点数は、公益財団法人医療機器センターの公式ページと公式PDF、厚生労働省の通知を直接確認しています。二次情報のみを根拠にした記述はありません。公式に確認できないことは「非公表」「確認できない」と明記し、推測で補っていません。
筆者の考えを述べている箇所は「筆者による提案」と明示して、制度上の事実と区別しています。
次に読む記事
- 第2記事:受験資格 — 呼吸療法認定士を取ると決めたら、まずここから。
- 第1記事:取る価値はあるか — 給料、診療報酬、メリットとデメリット。
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参考文献・出典
- 公益財団法人医療機器センター「第31回(2026年)3学会合同呼吸療法認定士認定講習会・認定試験 実施要領」(PDF・2026年7月31日確認)
- 公益財団法人医療機器センター「医療資格別合格率推移」(PDF・2026年7月31日確認)
- 日本心臓リハビリテーション学会「第27回心臓リハビリテーション指導士認定試験のご案内」(PDF・2026年度・2026年7月31日確認)
- 日本心臓リハビリテーション学会「更新に必須の条件」(2026年7月31日確認)
- 日本心臓リハビリテーション学会「第26回心臓リハビリテーション指導士認定試験講評」(2026年7月31日確認)
- 日本循環器学会「心不全療養指導士」(2026年7月31日確認)
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その3)」平成18年3月31日事務連絡(PDF・2026年7月31日確認)
この記事を書いた人
心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士
循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。
- 理学療法士(臨床経験10年以上)
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 地域糖尿病療養指導士
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