呼吸療法認定士は取る価値ある?給料・診療報酬で判断
情報確認日:2026年7月31日|対象:第31回(2026年度)/令和6年度診療報酬
どの記事を読めばいいか
- 取ろうか迷っている → この記事
- 自分が受けられるか知りたい → 第2記事(受験資格)
- 申し込み方と費用を知りたい → 第3記事(申込から認定証まで)
- これから勉強する → 第4記事(試験内容と勉強法)
- もう持っている → 第5記事(更新と50点の集め方)
- 心リハ指導士と迷っている → 第6記事(比較と、取る順番)
全部読む必要はありません。今の自分に当てはまる記事だけで足ります。
結論
- 給料はほぼ上がりません。 手当が出ても月に数千円から1万円程度です。
- 代わりに、呼吸が分かるようになります。血液ガスが読めると、同じ患者でもリハビリの中身が変わります。
- この資格が要件になっている診療報酬はひとつもありません。 ただし疾患別リハの疑義解釈で「経験の例」として研修が挙がっています。
- 費用は3.3万〜4.3万円。維持は5年ごとに50点と3,500円。使わないなら更新料だけが残ります。
「呼吸療法認定士って、取る意味あるんですか」
若手からいちばん多い質問です。答えは働いている場所で変わります。
ネット上には「スキルアップになる」「キャリアアップにつながる」といった説明が並びますが、抽象的すぎて判断材料になりません。この記事では給料と診療報酬という、いちばん気になる2つを先に片付けます。そのうえで、状況別の判断表を出します。
なお、制度の話は公式資料から、待遇の話は現場の声からとっています。どちらの情報かは各項目に明記しました。
給料の話を最初に片付ける
上がりません。 ここを期待して取ると、まず後悔します。
資格手当が出る職場もありますが、月に数千円から1万円程度という声が多く、そもそも手当がない職場も珍しくありません。金額は勤務先の給与規程しだいで、公式資料に定めはありません。
理由ははっきりしています。この資格を持っていても、病院が請求できる金額は変わらないからです。増収につながらないものに手当を付ける余裕がある病院は、そう多くありません。
注意
ここは公式情報ではなく、現場の声をまとめたものです。職場によって差が大きいので、自分の勤務先の給与規程を確認してください。資格取得の補助制度がある施設もあります。取る前に聞いておくのが得です。
診療報酬との距離:必須ではないが、無関係でもない
いちばん誤解が多いところです。結論から言うと、この資格が要件になっている点数はひとつもありません。ただし、国が「経験の例」として名前を出している箇所はあります。
資格と診療報酬の3つの距離
| 距離 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ① 必須要件 | ないと算定できない | がんリハビリテーション研修 |
| ② 経験の「例示」 | 国が例として名前を出す | 呼吸療法認定士の研修/心リハ指導士の研修 |
| ③ 無関係 | 条文に出てこない | — |
呼吸療法認定士は②です。持っていないと算定できないわけではない。かといって、まったく無関係でもない。
どこに、どう書かれているか
「経験を有する」という言葉が出てくる場所と、そこに認定士がどう関わるかを分けて見ます。混同されやすいので、表で切り分けます。
| 点数 | 理学療法士の要件 | 認定士との関係 |
|---|---|---|
| 呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ) | 経験を有する専従の常勤PT1名を含み、常勤PT・OT・STが計2名以上 | 疑義解釈で「経験」の例として研修が挙がる |
| 呼吸器リハビリテーション料(Ⅱ) | 専従の常勤PT・OT・STのいずれか1名以上 | 言及なし |
| 呼吸ケアチーム加算(週1回150点) | 呼吸器リハ等の経験を5年以上有する専任のPT | 認定士の記載なし。年数だけで規定 |
ここを取り違えないでください
疑義解釈で認定士の名前が出てくるのは、疾患別リハビリテーション料(呼吸器リハビリテーション料など)の話です。呼吸ケアチーム加算とは別の条文で、こちらは「経験5年以上」という年数だけが書かれています。「認定士を持っていれば呼吸ケアチーム加算が取れる」わけではありません。
疾患別リハの疑義解釈(原文)
厚生労働省の疑義解釈(平成18年3月31日 事務連絡・その3)の問94です。
疾患別リハビリテーションに規定されている「経験を有する」という規定は、具体的にはどのようなことか。(答)専門的な研修の例としては、平成18年4月1日現在では、心大血管疾患リハビリテーションについては、日本心臓リハビリテーション学会の認定する心臓リハビリテーション指導士の研修、呼吸器リハビリテーションについては、日本呼吸器学会等の認定する呼吸療法認定士の研修等がある。
公式出典:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その3)」(PDF) 19〜20ページ
原文を読むときのポイントが3つあります。
- 例に挙がっているのは「研修」です。 「資格を持っている人」ではありません。認定講習会を受けたことが経験の裏づけになる、という書き方です。
- 「等がある」で終わっています。 例のひとつという意味で、「これでなければならない」ではありません。研修を受けていなくても、実際に経験があればかまいません。
- 正式名称では書かれていません。 原文は「日本呼吸器学会等の認定する呼吸療法認定士」で、「3学会合同」は付いていません。
つまり、届出のときに「この職員には経験があります」と説明する材料のひとつ、という位置づけです。管理職や届出担当の立場だと、ここが効いてきます。
注意
この疑義解釈は平成18年(2006年)のもので、20年近く前の文書です。「平成18年4月1日現在では」という但し書きも付いています。現在も引用されていますが、実際に算定を検討するときは最新の通知で確認してください。
メリット
★の数は「実際にどれくらい効くか」の目安です。筆者の主観が入っています。
| メリット | 効き目 | 特に効く人 |
|---|---|---|
| 血液ガスが読めて、リハビリの判断が変わる | ★★★ | 急性期・ICU・呼吸器病棟 |
| 看護師・臨床工学技士と話が通じる | ★★★ | 全員 |
| RST(呼吸ケアサポートチーム)に入りやすい | ★★☆ | RSTのある病院 |
| 求人票の「優遇資格」に入っている | ★★☆ | 転職を考えている人 |
| 施設基準の「経験」を説明する材料になる | ★★☆ | 管理職・届出担当 |
| 後輩指導や院内勉強会がやりやすい | ★★☆ | 中堅以上 |
| 症例レポートが不要=挑戦しやすい | ★★☆ | 若手 |
| 学会に入らなくていい=維持がラク | ★★☆ | 全員 |
| 在宅での排痰・呼吸介助に自信がつく | ★☆☆ | 訪問リハ |
| 資格手当が出ることがある | ★☆☆ | 職場による |
若手にとって効くのは、下から4番目と3番目です。症例レポートも学会入会も要らないというのは、他の資格と比べたときの大きな違いです。心リハ指導士だと、10症例の報告書と2年分の学会員歴が要ります。
取る前と、取った後
いちばん変わるのは、人工呼吸器がついた患者の前に立ったときです。
取る前
- 人工呼吸器がついていると、正直こわい
- とりあえず関節を動かして終わり
- 「今日は無理そう」で1日が終わる
取った後
- 血液ガスと画像をまず見る
- 今日は離床していい/やめておく、を自分で判断できる
- 離床できない日も「ベッド上で何ができるか」が組み立てられる
急性期病院の理学療法士からは、「データや画像の解釈が早くなり、悪化を恐れて何もできない状態から抜け出せた」という声があります。判断の根拠を自分で持てるぶん、踏み込めるようになるということです。
注意
この段落は現場の声をもとにしています。公式に示された効果ではありません。
デメリット(正直なところ)
| デメリット | 深刻さ | 補足 |
|---|---|---|
| 給料がほぼ上がらない | ★★★ | 最大の不満点。病院の請求額が変わらないので、待遇に反映されにくい |
| 更新料・研修費がずっとかかる | ★★☆ | 5年ごと。「サブスクみたい」という声も |
| 呼吸器に慣れていないと勉強がきつい | ★★☆ | 回復期・整形中心の人は特に |
| できる仕事が増えるわけではない | ★★☆ | 業務独占ではないので、期待しすぎに注意 |
| 看護師では「持っていて当たり前」になりつつある | ★☆☆ | PT・OTではまだ相対的に少ない |
| 会場受講の枠が取りにくい | ★☆☆ | eラーニング枠が広がって、以前より緩和 |
現場でよく聞くのは、この2つです。
- 「取っても病院の増収にならないから、待遇に反映されない」
- 「職場が更新費を出してくれないので、更新をやめた」
一方で、「呼吸療法認定士や心リハ指導士は診療報酬に多少関わるぶん、職場が補助してくれることがある」という声もあります。取る前に職場の補助制度を確認する。これだけで負担がだいぶ変わります。
お金の話
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事前の講習会(12.5点を取るため) | 数千円〜 |
| 認定講習会(eラーニング) | 20,000円 |
| 認定講習会(会場+eラーニング) | 30,000円 |
| 受験料 | 10,000円 |
| 認定登録料 | 3,000円 |
| 公式費用の合計 | 33,000〜43,000円 |
公式出典:第31回(2026年)実施要領(PDF) 6ページ
ここに、試験会場(東京)までの交通費と、必要なら宿泊費が乗ります。地方在住だと総額8万〜10万円になることもありますが、これは筆者の試算で、公式の金額ではありません。
維持費は5年ごとに更新登録料3,500円。加えて、50点を集めるための研修費がかかります。集め方しだいで、5年分が1万円弱で済んだという報告もあれば、学会に何度も出て十数万円になる人もいます。詳しくは第5記事にまとめました。
結論:あなたはどうすべきか
筆者の判断です。 公式に示された基準ではありません。
| あなたの状況 | 判断 | ひとこと |
|---|---|---|
| 急性期・ICU・呼吸器病棟で働いている | 取る | 毎日使う知識なので、費用に見合います |
| 心臓リハビリをやっている施設にいる | 心リハ指導士が先 | 症例10例が集めやすい立場。求人でも単独で名指しされます |
| 循環器に進みたいが、心疾患の症例が少ない | こちらが先 | 呼吸療法認定士を取りつつ、学会に入って心リハ指導士の条件を育てる |
| 訪問リハで呼吸器の利用者がいる | 取る価値あり | 排痰・呼吸介助の場面で効きます |
| 回復期・整形が中心 | 急がなくていい | まず運動器の勉強を優先しても問題なし |
| すでに持っていて、呼吸器症例に関わる | 更新する | 研修を自分で選べば、5年で1万円弱に抑えられます |
| すでに持っていて、5年間まったく使わない見込み | やめる選択もあり | 使う場面がなければ、更新料の負担だけが残ります |
| 給料アップだけが目的 | やめておく | 手当が出ても月数千円程度です |
判断に迷ったら、ひとつだけ自問してください。「この1年で、人工呼吸器か酸素療法の患者を何人担当したか」。ゼロに近いなら、今年でなくてもかまいません。
読むときの注意
この記事は、性格の違う情報を混ぜています。切り分けておきます。
- 費用・制度・診療報酬:公式情報(医療機器センター、厚生労働省)にあたっています
- 手当の金額や待遇の話:個人の発信や掲示板の一例です。職場によって差が大きく、自分の勤務先に当てはまるとは限りません
- ★の数:筆者の主観による目安です
- 有資格者数:情報源によって数字が食い違います。何年時点の数字かを確認して読んでください
疑義解釈(問94)は平成18年度改定のものです。現在も引用されていますが、算定を検討する際は最新版で確認してください。制度も費用も改定されます。受験・更新の前に、必ず公式サイトをご覧ください。
この記事について
この記事は、3学会合同呼吸療法認定士を保有する理学療法士が、公式資料にあたって作成しています。心臓リハビリテーションとCPX(心肺運動負荷試験)を専門としています。
制度・日程・費用・点数は、公益財団法人医療機器センターの公式ページと公式PDF、厚生労働省の通知を直接確認しています。二次情報のみを根拠にした記述はありません。公式に確認できないことは「非公表」「確認できない」と明記し、推測で補っていません。
筆者の考えを述べている箇所は「筆者による提案」と明示して、制度上の事実と区別しています。
次に読む記事
- 第6記事:心リハ指導士との比較と、取る順番 — 循環器で働くなら、どちらを先に取るか。
- 第2記事:受験資格 — 取ると決めたら、まず自分が受けられるかの確認から。
参考文献・出典
この記事を書いた人
心リハラボ管理人 臨床経験10年以上の理学療法士
循環器クリニック勤務の現役理学療法士。心臓リハビリテーション・運動療法を専門に、臨床で学んだことを整理して発信しています。心臓リハビリテーション指導士(2027年または2028年に受験予定)を目指して学習中です。
- 理学療法士(臨床経験10年以上)
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 地域糖尿病療養指導士
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